「 神 戸 」
周縁の街から

1982年 撮影

日本カメラ(1983年4月号)




ニコンサロン(1986年)

 三十年以上も前になる。父母とともに焼け跡を歩き、川の上の駅から電車に乗り、へんなにおいのする地下駅で降りて、白衣でアコーディオンをひく人たちの前を過ぎ、人込みをぬけて、小さく騒々しい店へ入った。そこで、初めてチャーハンを食べた。いま、その味を思い出せないが、もの心ついて以来、父母とともに外食をした。ただ一つの記憶である。
 それから十余年後、ぼくは始終、その街へ通い、やさしき友たちと、安いチャーハンを食べたものである。